番外編 朝ドラで一目惚れ
今週のお題「人生変わった瞬間」について書く。
私は、建築士である。
とはいえ、建築士の資格を持ったものはこの世に思ったより多く存在しているもので、名のある建築士は知ってのとおり一握りだ。
私は無名の、いち企業戦士建築士である。
さらにいえば、その仕事に嫌気がさして「設計」の仕事をしないための転職をしたくちである。(転職に資格は活かしたのだが・・・)
さて、本題に戻って「私の人生変わった瞬間」は1998年のNHK朝ドラ「天うらら」のワンシーンを見た瞬間だ。
小学4年生か5年生の時である。
主人公は大工職人を目指す女性で、その女性が実家の工務店を「図面ケースを背負って颯爽と飛び出していくシーン」があった。(多分現場にでも行ったのだろう)
私はそのシーンのかっこよさに、一瞬で一目惚れをしてしまい、よく知りもしない「設計士」になりたいと思った。
そこからは、すべての事象がその夢を後押ししているように感じられた。
例えば、私は元来割に器用な方で、図工や絵が得意であったし、国語や社会科より算数や理科のほうが好きであった。実際に得意でもあった。
でもデスクで図面を引く姿に憧れたけれど、それで「なにを作りたいのか」は全く見えていなかった。
そんなおり、これまたテレビで「サグラダファミリア」の特集を見て、外尾悦郎氏が石を掘る姿を見た。
これだ!!と安直に閃き、私は「設計士」から「彫刻家」になることに憧れるようになる。
小学校を卒業する頃には、すっかり「彫刻家」になるためには美大・・・などと子供ながらに一丁前に考えていたのだが、中学の三年間で「思春期・現実視・経済観念」などの思考から「彫刻家では食っていけないのでは」などと考えていた。
高校に入学してみると、「設計士」という仕事が建築物に特化し、資格化された「建築士」という仕事があること、自分の成績が理系の大学への進学に有利であること(美大への進学については自分の実力を定量化できなかった)などを知るようになり、あとはもう猪突猛進、サクッと建築を学べる大学へ進学を決めた。
その後も、小さな発見を繰り返しながら自分の進路への考えをブラッシュアップしていくことになるのだが、私は、あの朝ドラをチラ見した一件で、「自分の夢を探す」という魅力的でもあり、ひどく悪路であるその道を歩まずに済んだ。
これが、良いとか悪いとかいう話しではない。
ただ、私は「夢が見つからない葛藤や苦悩」に時間を取られることがなかった。こういう葛藤を経験した方の方が人生に厚みがあるかもしれないが笑
人は、好きなことを仕事にできる人、できない人、しない人、したい人がいると思う。
また、好きなことを仕事にしてよかった人、後悔している人、なども様々だと思う。
私は、10歳頃から24歳まで、建築に興味を持ち、その後実務として人生を伴走した。
たった一瞬、テレビで見た女性設計士に憧れて。
私は、私に似合う仕事を見つけたと思う。一瞬で。
「人生変わった瞬間」の直感は、「間違いない」のだ。