ayan_no0の日記

0番目のあやん 手紙というかたちの日記

番外編 街を歩く3

30歳になる前に好きな街で暮らしていた。

どこだかわかったら、一緒に散歩してみて。

 

同じ東京都23区内だと言うのに、この地域の家賃は安い。助かる。まあ、23区と言っても端も端。

 

私はこの街に3年弱暮らしていた。

今日はここを歩く。

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この街にも地域猫がたくさんいる。

 

 

家を出る。家は11階建マンションの、10階。高い建物が隣接していないので、開けた景色が広がる。実はテーマパークの花火が毎晩拝めるのだが、人は怖いもので、慣れるといちいち毎晩は見なくなる。20時をすぎた頃、微かなその音に気がついた時だけ、カーテンを開けて花火を眺めたりした。

マンションのすぐそばには区立の大きな公園があり毎年初夏と、晩秋にバラでいっぱいになった。噴水も大きくて、近隣の未就学児は皆ここで水浴びをしている。私はそれを横目に公園内に造成された小高い丘へ登るのが好きだった。家より高さは低いその丘は、なぜだかずっと遠くまで見渡せる気がした(気のせいなのだが)。

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その公園は東の果てまで進むと、ポニー牧場があって、数頭のポニーがいつも頭をもたげてトボトボと歩いていた。

 

家は幹線道路沿いにあり、エントランスを出るとその道路をすぐ南下する。すぐとなりのロイヤルホストは、仕事で疲れて料理する体力すら無い時に駆け込むのに便利だ。サラダにケールが使われているところが気に入っている。

この道をもし北上すればメトロの駅へと辿り着き、リトルインディアと呼ばれる街へ行ける。

メトロの中でもこの路線は屈指の混雑率で登り方向の通勤列車は乗車率300%なんてざらなのだ。

私はこの街のひとつ西側の街で生まれたのだが、当時からパラパラと街でインドやネパールの方を見かけた。おそらく近所に大きなNTTデータの会社があったから、数学に強い人がたくさん暮らしていたのだと思う。

 

さて、道を南下する。

大きな道は湾曲し、真南から少し西へと進路をとる。一つ目の信号をすぐ迎えることになるが、それを越えると街は工業地帯へ。大きな倉庫が立ち並ぶ。倉庫へはいつも大型車が出入りしており、住宅の数も減ってくる。

さらに南下する。すると、湾岸部を走る道路と交差することになり、人は歩道橋でその上を縦横無尽に進むことになる。ここまで500mほどは歩いただろうか。道はここで南下をとめ、海岸線にぶつかっている。西、つまり右へ進むとJRの駅へとたどり着ける。

この街には大きな大きな東京都が管理する、水族館をも、内包する公園がある。しかしそれしかない。駅前ですら、昔はマクドナルドが出店していたが、それ以外にはほとんど商店などもない場所だ。

駅で電車には乗らず、その南側に広がる公園へと入る。ここまでで徒歩20分ほど。

公園は季節ごとに違う花が咲き、大きな観覧車が聳え立つ。観覧車の真下のあたりには、シーズンごとに異なる花が植えられて、秋にはコスモスの摘み取りイベントが開催されていた。

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好きなだけコスモスを摘んで帰ることができる。(開催期間が短いので公園のHPを参照のこと)

広場を横目に、公園の目貫通りを進めば、私の愛する谷口吉生が設計した展望台、クリスタルビューのおでまし。自宅から徒歩圏内にこれがあることを贅沢に感じる。冬は早朝にヘッドフォンと暖かいコーヒーを水筒に詰めて、散歩へくるのが好きだった。(ちなみに私の最も好きな谷口吉生作品は上野の法隆寺宝物館だ)

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巨大なゲートは我々訪問者を海へと誘う。そう、クリスタルビューが臨むのは穏やかな東京湾

さらに進むと二つの小さな渚。幼稚園児だった私はここで海遊びをした。当時は汚かった水も、今はだいぶ透き通っている。

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ここで道は終わり。

ここで世界は終わり。

ここで海と空も終わり。

 

私の大好きな街。

私の生まれた街。

私の思い出。