9通目 きっとこれはヤキモチ
私は今、妬いています。
先週の暮らしについて綴ったあなたのSNSを読んでいたら、「高校時代の友人」と実家に帰ったタイミングでランチをしたとありました。
私にはその友人に二人心当たりがあるのです。そしてそれはあながち間違いではなく正解だとおもうのですが、どちらなのか、まではわかりません。
正直にいうと、二人のうち片方は私も会いたいくらい好きな人、もう一人はできれば会いたくない人です。
大人になって会いたくない人なんて、そうそういないですし、今回の場合も「大きな因縁があって絶対会いたくない」ということもないのですが、昔から話が合わないことを常に感じていたので、月日が経った今もきっとリズムが合わないだろうな…という気持ちなだけなのですが。
それはさておき、私はあなたにゆるく気づいてもらうために、この現代で、この世で、最も受動的な方法であなたへアプローチしている訳ですが(アプローチは能動的な言葉だから不思議ですね)、その理由は「おしゃべりがしたい」から。女子高生のときみたいにくだらないおしゃべり。きっと私とあなたなら今も変わらぬ熱量でおしゃべりできる、と思っているからです。
でも、最近のあなたについて考えれば考えるほど、なんだか今の私と「楽しく」話せるのかな、なんて考えてしまいます。
その、SNSに登場した高校時代の友人といる方があなたにとって楽しい時間なのではないでしょうか。
私は旅行に行くことが好きですが、その旅行へいく下調べも同じくらいか、それ以上に好きなのです。
つまり、あなたに会ったらこんなことをしたい、あんな話しをしたいと夢想している間が至福で、もしかすると…などと考えてしまいます。
過日の手紙に書いたように、あなたに会いたいと熱望するようになってから、他の人にも会っておくか〜と考えるようになり、たくさんの「久しぶりな人」と連絡を取るようになりました。世はまたコロナ禍に突入していますが、楽しいやりとりが増えました。
気もそぞろ、とはいいませんが、あなたのことを考える時間も減ったかもしれません。
高校の時、私はあなたを一番にしなかった。
私は一番を作らないようにバランスをとった。
あなたは私にヤキモチを妬いてくれたことあった?
きっとない、とてもいい意味で。あなたは誰も縛らない。誰にも寄りかからず自分の世界に依存していたから。
家族が暖かくて、大切な居場所として完成していた。
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私は好きな人が途切れたことがありません。
物心ついた幼稚園児だったころから、常に好きな人がいます。三浦しをんさんの「きみはポラリス」でもあるように、人は恋という言葉や意味を知るまえに恋心を知る気がします。
自分が小学生の高学年になるにつれて、思春期にはいるにつれて自分の容姿が、相対的に如何程であるか、また社会の中で自分がどのようなキャラクターであるのかを理解し、私は自分の想い人について明言することを禁じました。
誰かの一人になることより、みんなの私でいたかったことも大きいですし、思春期に入る前に両思いになった男の子とは、素敵な思い出こそ作れたけれど、クラスの女の子たちからの風当たりは大きく強いものでした。そういった煩わしさに怯えていました。
高校へ上がる頃には、そんなやっかみなどなくなりましたが、同級生と同じ人を好きになることや、自分の想い人を友人に見せたり紹介することに恐怖心がありました。事実、私は校外に交際相手がいましたし、自然と同じ学校や同じ地元の人に好意を抱くことがなくなりました。
あなたにだけ、自分の恋愛について素直に話すことができたのは、あなたに確固たる想い人がいたことと、あなたが決して人から「奪う」タイプの人間ではないと分かったからです。
私は人に奪われることが、極端に苦手です。それは他愛のないじゃれあいの中に突然起こったり、あるいは競争の中で起こったり、人は毎日さまざまな奪い合いをしています。過激な単語だから極論に聞こえますが、例えばお喋りの止まらない私は友人の時間を奪っているでしょう。例えば私は受験や就職の場面ではいわゆる失敗をしたことがありません。例えば彼のお気に入りのデニムを借りたまましばらく履いていたり。
こうして自分も多くを奪ってきたのに、奪われることへの免疫がまったくないのです。
一人っ子だからでしょうか、ルールのある公式な場所では競い合いができるのに、日常の野生の競争には参加できません。
だから争いが起きないように、奪い合いが起きないように奪われるものを持たないようにするのです。
あなたはどうでしょう。個性がありました、自分の志がありました。もちろんそれは他の皆にとって、奪いたいものでした。だからあなたは奪われました。平穏な高校生活を。
もしかしたら、私も野生の競争をしたかったのかもしれません。
これもきっとヤキモチです。
今日は桃フラペチーノsold outの表示を呆然と眺めながら
あやより