番外編 映画「メタモルフォーゼの縁側」を見た
映画を見てきました。
詳細なストーリーを書く予定はありませんが、ネタバレと感じられるようなことも書くかもしれませんので、鑑賞を楽しみにしておられる方は、あまり先を読まない方がいいかもしれません。
水曜日に映画「メタモルフォーゼの縁側」を見てきました。
本当は、「死刑に至る病」という映画をみようと思って、映画館に行くという予定を組んでいたのですが、くるりの岸田繁氏がこの映画について言及した記事をnoteに書いており、それを読んで再考した結果、これは原作の本を読むに留めようと思い直したのです(ちょっと描写が過激なようなのでDVDや配信が開始されたら、途中でギブアップしやすい環境で鑑賞しようかな、と思っています。ちなみに原作とエンディングが違う?という話も聞きました)。
そして、「死刑に至る病」を断念した私は映画を見る気持ちになっているので、予定をリスケする気持ちになれず、ほかの映画を探しました。行こうと思っていた近所のシネコンにはヒット中の映画の上映ラインナップが十分にあって(ミニシアターではないのでそういったムードのものはなかったが)一旦は、「トップガンマーヴェリック」を見る気持ちになっていたのですが(ハリウッド超大作で過去作大ヒットって、面白くないわけないじゃないですか笑)、前作を見ていないことが気になったり、トムクルーズさん以外の俳優さんについて名前すらわかっていなかったこともあっていまいち踏み切れないでいました。
そこで、自分のTwitterのフォロワーさんが「メタモルフォーゼの縁側」を見てきた、よかった、と言っていたのを思い出し(口コミって大事ですね)、今回の鑑賞に選びました。
多くのPRが行われていたので、話しの概要と漫画が原作であること、主演が芦田愛菜さんと宮本信子さんであることなどは把握していました。
ここ最近ミステリー小説ばかりを読んでいたり、サスペンス映画ばかりをアマプラビデオで見ていたので、すっかり自分が「日常系」や、ぬるっとしたオチのない小説(こういう書き方したら怒られそうだな)が好きなことを忘れていました。
どう考えても好きなタイプの映画だろうな〜と思いながら映画館へ向かいました。
端的に感想を言うと、余計なこと一つも言ってなくてめっちゃよかった・・・!です。
ーーーーー(以下ストーリーに触れます)ーーーーー
まずBL漫画を通して、10代の女の子と70代の女性が出会う場面についてですが、いくつも琴線に触れる部分があって、一つは本屋さんでアルバイトする芦田愛菜さん、めっちゃハマってんな!と言うこと。しかもその口調が「人とコミュニケーション取るのが苦手な人のソレ」で笑ってしまうくらいです。宮本信子さん演じる雪さんは、絵に描いたような「いいおばあさん」で、そこにもホッと心が暖かかくなりました。現実世界にいる妙齢の(というかもう少し上の)女性って、もう少し扱いにくいイメージがあって、悪気がなくても無愛想であったり、口調のせいでまっとうな主張をしているのに異常にわがままに見えたりするけれど(個人の見解ですが)、雪さんは私も友達になりたくなってしまうような、ついつい家までついて行ってしまいそうなチャーミングなおばあさんでした。
次に、そのきっかけをBL漫画にしている点ですが、私は今までにBL漫画と呼ばれるものを一つとBL小説と言われるものを一つ、読みきったことがあるのですが(竹宮惠子さんの「風と木の詩」と長野まゆみさんの「若葉のころ」)そのどちらとも、映画の雪さんと同じく「表紙の絵がとても綺麗で思わず手にとったこと」が出会いのきっかけでした。BLものって、絵が綺麗なものが多いですよね(女性の読者が多い傾向にあるから、ダイナミックな絵柄よりウケがいいのかもしれないですね)。雪さんが芦田愛菜さん演じるうららちゃんに、絵が綺麗、と話している場面で「激しく同意」してしまいました。私にはとても自然な出会い(うららちゃんとも、BLとも)だったのです。
映画だったら、曲がり角でぶつかって口に咥えたトーストを落とすような出会いでもある意味許されるところを、個人的にベストオブ自然な出会いで始まった物語に没入するのに時間はかかりませんでした。
本編で、二人がオススメの漫画について素敵な縁側でおしゃべりして、仲を深めて行く中で雪さんがうららちゃんに「漫画を書きたくならないのか」と進言し、そんなことにはならない(自身の絵が下手だと思っているので)と言うのですが、最終的にうららちゃんは自分でBL漫画を書き上げることになります(なんとなくジブリの「耳をすませば」を彷彿としますね)。その中で、公式HPにも取り上げられている台詞ですが、
「漫画描くの楽しい?」
「あんまり楽しくはないです、自分の絵とか見ててつらいですし」
と言うやり取りがあります。
人は、自分の創作物をその創作過程でなかなか自信作、全て順調、とは捉えられないと思うのです(もちろん作っている最中から、これは最高傑作、と思いながら作業している人も多くいるだろうし芸術家と呼ばれる人はそういった自信が重要な気もします)。
主語が「人」で超でかい話しをしてしまいましたが、私は自分の作品(仕事柄、そういったものを創作していたのですが)を、完全に肯定できたことはありませんし(顧客には申し訳ないことです・・・)特に初めてのものは作っている道中、とても不安定な気持ちになったことを覚えています(学生の時でしたが)。
そういう、生みの苦しみや、一種の開き直りの心情、最終的に感じる挫折感など、響いて響いて仕方ありませんでした。
さらに鑑賞後に振り返って、同級生の女の子が強く美しく描かれていたことにも好感が持てましたし(なんかムカつく描写や、ずるい奴ではなく、本人が輝いているがゆえに、うららちゃんが眩しく感じてしまう描写はあったが)、幼馴染の男の子も映画に余計な恋愛模様を持ち込んだりせず、可愛らしい高校生だと感じられました。また作中に登場する漫画家としてコメダ先生こと古川琴音さんが登場するのですが、個人的に好きな俳優さんで、しかもこういう役やって欲しいと思っていたイメージ通りだったので、余計に感激しました。
作中、前述のとおり、うららちゃんが執筆する漫画が、割ときちんと映画の中で描かれるのですが(漫画のページを読み進めるような構成で全編公開される)、その物語が、めちゃくちゃ良いのです。思わず映画館のHー6のシートで感涙していたら(その前のシーンからもう泣いていたが)隣のHー7に座っているお姉さんも、めちゃくちゃ泣いていました笑
最後に、エンドロール中に流れる、雪さんとうららちゃんの歌うエンディングテーマがものすごく良いので、ぜひこれから鑑賞される人は(これから鑑賞する人はこのネタバレブログ読んでないか・・・)絶対に席を立たずにエンドロールを見ていただきたいです。
怒涛の感想たれ流しになってしまいましたが、偶然見ることにした映画でこれだけスッキリとした気持ちになれて、運が良いと思いました(自己肯定感↑↑)
この後、私は映画を観る直前に予約した初めてのマッサージ店に行き、ここは当たりだ、といいお店と出会い、帰宅するために都バスに乗ったら乗っている道中に通り雨が降り、バスを降りるときには止んでいてタイミングばっちりで・・・
「完ぺきな一日」だよ、と思いました。