ayan_no0の日記

0番目のあやん 手紙というかたちの日記

3通目 私たちは似ている

こんばんは。

今日は私たちが、出会った頃のことを思い出して手紙を書こうと思います。

 

私たちは、県内の同じ公立高校に入学しました。英語の学習に力を入れた学校で、入学生のほとんどがカリキュラムの目玉である短期交換留学制度に興味を持っていました。

私はというと、同じ中学校に通っていたカッコいい女性の先輩を追いかけて、正直に言うと志望ランクを下げて入学しました。

(同じ硬式テニス部だったそのボーイッシュな先輩は、私の入学と同時に「高3になったから受験に専念するためにテニスは辞めるわ」と宣言し、私はあっけなくテニスをするカッコいい先輩を見る機会を失ったわけですが。)

 

あなたは、どうだったでしょうか。やはり英語を勉強したかったのでしょうか。こういった真面目な話しをしたことってあったでしょうか。

 

我々の通うことになった高校の校風は、自由や主体性を重んじ(大体どこの学校もそうかしら)、でももっとわかりやくす言うと「陽キャで行こうよ!」といったものでしたね。

制服の着こなしにも厳しくありませんでした。近隣の高校よりも少し偏差値が高く、自由度も高かったと記憶しています。決して人気のない高校ではなかったはずです。

(なんと、今は少し規律に厳しくなり、入学希望者もさらに増え、偏差値が上がっているらしいですよ、本当かな)

 

私たちは、入学した時に同じクラスになりました。苗字順に並んだ番号の順に着席し春を過ごしました。あなたは隣の列にいて、入学したその日におそらく言葉を交わしたことだと思います。席の近いもの同士がまずは友達になるものです。しかしながらこの一年間で、私たちは「友達」にはならなかったと思います。クラスメイトという距離感が適当だといえたでしょう。そもそも、先輩を見るために入学した私が、高校生活に意欲的な筈はありません。友人作りに精を出してもいませんでした。同級生とのメールアドレスの交換は、たずねられた場合に限定して交換していましたし、暫くしてから消していました。(いま思うとなぜなのかわかりません)

 

進級し、二年生になった私たちはまたしても同じクラスになりました。わたしはその頃、同じクラスの友人とはそこそこに、普通科では無い特別クラスの友人とつるんでばかりで、クラスメイトの名前を把握しきれていないという惨憺たる状況でした。そんな一年生が二年生に進級すれば、当然見知った顔に親近感を覚えるもので、わたしはこの時初めてあなたと仲良くなりたいと思いました。新しいソーシャルを生み出すより、同じクラスだったよしみで仲良くしてもらった方がラクだと思ったのです。

 

でも、わたしは自分でも無意識の潜在意識の中であなたに惹かれていました。いまになって思い返すと、あなたは勤勉なタイプでしたし稚拙な面がなく、最低限の社会性もありました。のちに知ることになりましたが、長子であることがかなり大きくアイデンティティに影響しているタイプだったと思います。つまり、「迷惑をかけないタイプ」の人間だったので、わたしが懐くには十分でした。

 

こうして私たちはコミュニケーションを取る間柄、クラスメイトより一歩を進める間柄になったのだったと記憶しています。

とはいえ、学校生活に特に興味がなかったわたしは一緒にお弁当を食べる友人が欲しかった程度の気持ちだったかもしれません。高校生なんて、みんなそのようなものだと思います。

 

私たちは似ていると思いました。

 

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陽キャであれ」という校風の中で、私たちは無気力でしたし、学校の外に世界を持っていました。

でも、似ていない部分も大いにありました。当然ですが。まずは、どの程度自分を隠していたかは、差があったと思います。端的に言ってあなたはいじめられていました。陰口を叩かれるという類のものです。加害側と被害側が認識して(あるいはどちらかが認識することで)いじめという形が作られるのかもしれません。だから私の思い違いかもしれませんが。

皆の標的になった原因は、あなたが自分の世界をもっていたことと、制服の着こなしが皆と違ったこと。その程度のことだと思います。スカート丈が長く、当時のマジョリティの思う「カワイイ」ではなかったからでしょう。私もかなり人間的には社会性が低く、そう言った標的になりうる要素を持っていたとは思いますが、表層の擬態は欠かしませんでしたので皆の目にとまらなかったのだと思います。

でも私はあなたが好きでした。くだらない陰口が聞こえているのか否か、わかりませんでしたが、あなたが全然変わらなかったから。

 

そもそも、「カワイイ」制服の着こなしでなくとも、あなたは白く繭のような肌で可愛かったし、知的で聡明でした。そして、私と同じくらい、あるいはそれ以上にひねくれていました。

 

だから、似ている私たちは話しが尽きなくて、ずっと「おしゃべり」できる間柄なのです。

 

今日は自宅の食卓から愛猫を眺めながら。

 

 

あやより